文 _ 鍾文萍 写真 _ 楊智仁 台湾のエスニック‧グループの一つで、独自の文化を持つ客家の人々。台北では客家の人々はその昔、かつて存在した台北城の南側に位置する中華路二段の住宅エリア「南機場公寓」周辺に集住していました。幹線道路が走るため商業が盛え、客家人たちは近くの南昌路をはじめ同安街、晋江街、汀州路に店を出し、客家人のコミュニティーが次第にあちこちに形成されていきました。台北市客家文化主題公園や市内で人気の客家料理店2軒がこのエリアにあるのも、こうした歴史的な背景と無関係ではありません。
伝統料理を今風にアレンジ
「晋江茶堂」は裏通りに隠れた古民家を利用した客家料理店です。料理長の謝豊明さんは、伝統的な客家料理は「塩辛い‧香ばしい‧油っこい」が特徴で、これをおかずにご飯を何杯も食べて働く力をつけていましたが、今の人たちはあっさりとした味を好むため、調理法を少し変えていると話します。きしめんに似た米の麺「粄條」は油で炒める代わりに醤油とシイタケ、エビを加えて軽く混ぜ合わせ、香ばしいながらも油っこくない味わいです。豆酥(揚げたおからに醤油やゴマ油などで味付けをしたもの)をまぶした玉子豆腐は暑い日に食べるとあっさり感が格別です。「冷泉油鶏」は山林などで放し飼いされた鶏の肉をスープで煮て、そのまま冷やして味をしみ込ませてから表面に油、塩をすり込んだ料理です。肉の表面はしっとり滑らかで、店特製のキンカンソースをつけて食べると口当たりが良くとてもジューシーです。このほか、魚のトマト鍋、牛バラ肉とキムチの煮込み鍋といったメニューの提供を始めたところ、興味津々の若い人たちがさらにお店にやってくるようになりました。ここ数年、客家の農村で注目を集める野菜、水蓮菜(タイワンガガブタ)の細長い葉柄部分をショウガの千切り、赤トウガラシと一緒にゴマ油で炒めた料理はほのかな香ばしさと辛さが良いアクセントになっていて、とてもシャキシャキした食感です。主食は粄條以外にも熱々の白米に醤油、ラードをからめた口当たりのなめらかなご飯もあり、一口食べると懐かしい味わいが口に広がります。
客家ママの得意料理
お母さんというのは料理の神様のような存在で、家族のためにどんな食材も絶品のごちそうに変えてくれます。客家人家庭のお母さんも多分に漏れません。客家料理店「甘家伙房」の洗面器より大きな皿に盛られた鶏肉、豚足、客家小炒(干しイカ、干し豆腐、ネギ、シイタケ、トウガラシなどの炒め物)といったメニューからは、お客さんに良い食材を使った料理をお腹いっぱい食べてもらいたいという、女将さんの我が子に注ぐような愛情が伝わってきます。料理長の甘瑞琴さんは、客家人は物資が極めて不足していた時期を経験しているため、食料に対する危機意識が強いと話します。食材を長持ちさせ、無駄をなくすために、福菜(塩漬けした野菜を天日干しし、密閉した容器で自然発酵させたもの)やタケノコの漬け物、梅干菜(カラシナ類の漬け物)のように、野菜を漬ける習慣があります。甘家伙房の豚足料理は炒めたタケノコを加えて蒸しており、豚足にしっかり濃い味がしみ込んでいます。肉の油がしみ込んだタケノコは香ばしく、適度な酸味でくどさを感じさせません。客家人がお客さんをもてなす際に欠かせない料理です。
客家人は昔、先祖や神様を祭る際に丸鶏、豚肉、干しスルメの「三牲」を供えていました。丸鶏をスープに入れ弱中火で煮込んだ後、塩、米酒、ごま油で味付けしたものは客家文化の宴席料理として有名で、タレをつけなくてもしっかりした味付け、香ばしいおいしさを堪能できます。食べきれずに余った豚肉、干しスルメを小さく切り、青ネギを加えて強みでサッと炒めれば、醤油の濃厚な香りと味わいを放ち、ご飯が進む客家小炒の出来上がりです。シャキシャキした食感とそのおいしさに思わずとりこになりそうです。
客家のおもてなし茶「擂茶」(晋江茶堂)
焼き粄條(晋江茶堂)
冷泉油鶏(晋江茶堂)
ラードかけご飯(晋江茶堂)
晋江茶堂
中正区晋江街1号
(02)8369-1785
11:00~14:30
16:30~21:00
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