台湾ではここ数年、国産の若者向けドラマ、映画の人気が高まっていて、好調な興行成績を叩き出しているだけでなく、そのロケ地も俳優やアイドルのファンたちが作品を見た感動を蘇らせる場所としてにぎわっています。特に恋愛作品のロケ地を巡り、主人公と同じ道を歩き、同じ風景の中に身を置いて心を打たれたセリフを噛みしめたり、主人公の気持ちの移り変わりを想像したりするのが流行っているようです。多彩な歴史と文化の蓄積を誇る台北には映画やドラマの監督たちが撮影場所にぴったりと考えるような場所が数多く存在します。暖かい春の日に、恋人と一緒にこういった恋愛映画のロケ地を巡り、スクリーンに映し出されたストーリーを追体験する日帰り小旅行に出かけませんか? 09:00 ~ 12:30 台湾語映画界のハリウッド・北投へ
風光明媚な天然の温泉郷――北投は、台湾語映画の隆盛期に当たる1960 年代、映画監督たちによってしばしばロケ地に選ばれ、『温泉郷的吉他(温泉郷のギター)』、『王哥柳哥遊台湾(王さん柳さんの台湾珍道中)』など数多くの作品が生み出されました。全土で最もロケ隊が多く集まる場所となった北投は当時、「台湾語映画のハリウッド」の異名で呼ばれました。
台湾語映画が一世を風靡した時代を描いた2013 年の映画、『阿嬤的夢中情人(おばあちゃんの夢中恋人)』で、主人公の奇生がヒロイン、美月を乗せてオートバイで疾走するのは北投の景勝地の一つ、「地獄谷」です。とはいっても、そこはかつて同じく地獄谷と呼ばれ、現在「地熱谷」の名で知られる観光スポットではなく、市街地から少し離れた山中に位置する「硫黄谷」のことです。ここは火砕岩や堆積岩で覆われた地形で、そこらじゅうに口を開けた噴気孔から沸騰したやかんのようにいつも蒸気が立ち上っています。そんな光景の中、主役を演じる俳優、藍正龍(ラン・ジェンロン)と女優の安心亜(アンバー・アン)がバイクで駆け巡るシーンはワイルドでロマンチックな雰囲気にあふれています。
一方、北投の市街地に目を移すと、そこは約100 年の歴史を持つ温泉地特有の静謐な空気が流れています。中でも特に古風で趣きのある「北投文物館」は、映画『殺手欧陽盆栽(殺し屋・欧陽盆栽)』(2011 年)で主人公の殺し屋の師匠、騙神が友人と語り合うシーンや、ドラマ『華麗的挑戦(スキップ・ビート!)』で韓国人俳優、ドンヘとヒロインの陳意涵(アイビー・チェン)が子供時代を共に過ごした温泉旅館のシーンでロケ地に選ばれています。ここは1921 年に建てられ、当時の北投で最高級温泉旅館として知られた「佳山旅館」が前身で、建具から木製の階段まで至る所に精巧な細工が施されているほか、手入れの行き届いた庭園も見る人を引きつけて止まず、台湾の和風木造建築の最高峰と評されています。
また、映画「愛情捷運系列(台北愛のMRT シリーズ)」の第2 作目に当たる、3 月18 日公開予定の『五星級魚干女(5 つ星の干物女)』でも北投が撮影地に選ばれており、癒やしの温泉郷と林孝謙監督の温かく繊細さにあふれた作風が非常にマッチした仕上がりとなっています。長い歴史を持ちながら経営の危機に直面する老舗温泉旅館を救うため、祖母を助けようと誓った外見に構わない孫娘と、MRT に乗って住み込みバイトにやって来た米国人の今どき男子が一体どのような奮闘劇を繰り広げるのでしょうか?劇中には台北市立図書館北投分館、地熱谷、北投公園、北投市場など誰もが知る、または知る人ぞ知る数々のスポットが林監督の目を通して登場します。物語の進行とともに、まるで現地のくらしの手触りを感じられるような中身の濃い旅行をした気分になり、北投の独特な味わい深さ、美しさを再認識させられること請け合いです。
このほか北投公園が登場する最近の映画としては、人気絵本作家、幾米(ジミー)の作品を基にした『向左走・向右走(ターンレフト・ターンライト)』(2003年)が最も有名です。主演の金城武と梁詠琪(ジジ・リョン)演じる、同じマンションに住む主人公の男女が初めて出会う場所として北投公園にある噴水池が選ばれました。ここでは風にあおられて池に手紙を落とした女性と、その手紙を水に濡れることも厭わず拾い上げた男性が意気投合するも、二人が再会を約束して交換したメモに書かれた電話番号がにわか雨によって読めなくなってしまうという、美しくもせつない場面が描かれており、ジミーファンにとっては必ず訪れるべき「聖地」となっています。またドラマ『我可能不会愛你(イタズラな恋愛白書)』(2011 年)でヒロインの又青と高校時代の同級生、李大仁がたびたび口論していたのは北投の山腹にある復興高校です。「台湾語映画のハリウッド」は世代を超えて映画界に強いインスピレーションを与え続けており、今もなおロケ地としての人気に陰りは見えません。ちょっとひと歩きするだけでスクリーンで見た数々のシーンに巡り合えることでしょう。
13:00 ~ 17:00 木柵でヒット映画を噛みしめる
2014 年にわずか6 日間で1 億台湾ドルを超える興行成績を挙げ、台北に再びコーヒーブームを巻き起こした台湾映画『等一個人珈琲(Café·Waiting·Love)』の舞台となったカフェは、景美女子高向かい側の路地裏にある実在します。同店には映画で使用されたセットがそのまま保存されており、多くの映画ファンがここを訪れ、ヒロインの思蛍、どんなコーヒーでも淹れることができるバリスタの阿不思、謎多き女主人、主人公の男子学生、曾元拓と楊澤于が店内で繰り広げたエピソードに思いを馳せたり、あの名ゼリフ「人はみんな誰かを待っている。自分を特別の存在として見てくれる誰かを」を噛みしめたりしています。そんなことを思いながら飲む、この店のコーヒーの味は格別でしょう。
同店ではメニューにも映画にちなんだアイデアを取り入れています。「等一個人珈琲」シリーズの「男のコーヒー」、「恋愛では愛されない者こそ浮気相手」、 劇中で阿不思が見せた類まれなバリスタ技術を彷彿させる「華山決闘の絶望」といったコーヒーは、一風変わった名前ながら独特な風味が味わえます。また、「相性ピッタリワッフル」や、モーニングセットの「告白には勇気が必要」、「サケては通れないフランスパン」、「ギリシャ風サラミパニーニ」は好きな人に告白しようとしている人間、片思い中の人間に大きなパワーを授けてくれるに違いありません!
コーヒーの後は、木柵公園に向かいましょう。この中にあるローラースケート場は、こちらも大ヒット作『我的少女時代(OurTimes)』のロマンチックな名場面の舞台となりました。湖をぐるりと囲む遊歩道、あずまや、子供用の遊技場、スケート場を備えた1980 年造成のこの公園は、ヒロインの林真心が夜、もう一人の主役(同級生の不良男子)、徐太宇と一緒にスケートの練習をする場面や、林真心が徐太宇からもらったテープを聞きながら星を見上げ、そばにいるかのように彼のことを想うシーンで登場します。当時のセットで使用され、ロマンチックな雰囲気を醸し出したイルミネーションは取り外されていますが、スケート場でひと滑りすれば、自分の「少女時代」がよみがえってくるかもしれませんよ。
18:00 ~ 剣南山でドラマ主人公の足跡探す
大直地区の剣南山は、夕方から冷え込み、天候も変わりやすく雨の多いエリアですが、こちらもドラマ『我可能不会愛你』のロケ地となったことで訪れる人の絶えない、人気スポットとなっています。剣南路から山上の剣南蝶園へ向かうと、標高が高くなるに連れ徐々に広大な夜景が目の前に広がります。ここは主人公の程又青と李大仁がビールを飲みながら夜景を眺めるシーンが撮影された場所で、夜のとばりの中に広がる光の海、月明かりを浴びながらゆっくりと回転する七色の観覧車、堤頂大道を行き交う自動車のヘッドライトが織りなす光景の美しさは絶品です。このドラマを見た視聴者の多くが「陽明山や猫空以外にこんなにきれいな夜景が見られる場所が台北にあったなんて初めて知った」と驚きました。しかも剣南山はMRT 剣南駅から歩いてわずか数十分と、今後、手軽な夜景スポットとしてさらに人気が高まりそうです。
春の明るい日差しに包まれ、映画のロケ地を巡って公園を散策したり、コーヒーを味わったり、夜景にうっとりしたり…あなただけの幸せな思い出を作ってみてはいかがでしょうか。
北投文物館
幽雅路32号
(02)2891-2318
北投公園
中山路2号
復興高中
復興四路70号
(02)2891-4131
等一個人珈琲
一寿街44巷1号
(02)2936-0596
木柵公園
興隆路4段50号
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